わがままシュガー


「あぁもう、和香はほんと……そういう所ばっかり気付いてくれちゃう」



佐藤のあたたかい手が、私の頭を撫でる。



「眠ってるんだよ」



掠れて聞こえるその声は、少し震えているようにも聞こえた。

眠ってる……?



視線を反らす佐藤を見上げてから、理事長に視線を移す。

それは……ただ横になって目を瞑っている、というだけではないような意味の気がする。



「ここではなんだから、移動しないかい?」



理事長がこちらへと歩んでくると、佐藤の肩にぽんと手を乗せ、さする。

落ち着けるように、宥めるように。

佐藤は間を空けてからこくりと頷いた。



「……ごめん、和香」



静かに響く声に、今度は先程佐藤を責めていた自分を責める。

……あぁ、佐藤が家族の話を避けていたのも、きっとそういうことだったんだ。

気付いていなかったとはいえ、無理やり聞き出すような勢いで、佐藤を責めてしまっていた。



「私、こそ」

「いや、和香には遅かれ早かれ話す気でいた。ただ……話すのが怖かっただけ、なんだ」



佐藤が、怖がっていた……。

私も臆病で、怖がりだ。

でも佐藤にだって怖く思うものはある。
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