音に祈りを!歌に願いを!
「……声?」

「新曲を獲得しましたって声が聞こえたんだけど……」

僕の言葉に、悠は首を傾げた。

「そんな声、聞こえなかったけど……」

「え……?」

「……君が聞いたのは、音の精霊の声だよ」

「……音の……精霊?」

僕が首を傾げても、男性は黙ったままだ。少しした後、男性は口を開く。

「……今日は、もう遅いから帰りなさい。説明は、休日の明日してあげるから……午前10時に、近くにあるゲーセンの入口まで来て。その、ペンダントも持ってきて欲しいんだ」

「……そうだね。今日は、もう帰ろうか」

「…………うん……」

「陽音、どうしたの?」

悠は、そう言って心配そうに僕を見た。

「え……?」

「何か、嫌そうな顔してたから……」

「……大丈夫。帰ったら、宿題しなきゃいけないから嫌だなって……」

僕の言葉に、悠は「……そっか……」と納得のいかない表情で僕を見ながら呟く。

本当は、宿題なんて出されたその日に終わらせた。宿題が終わってないなんて、嘘なんだ。

「……」

……駄目だな……今日も、嘘をついちゃった。本当は――。
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