獅子組と私
どのくらいたったのだろう。
村部はほぼ、虫の息だ。
それでも飛鳥だけは、止まらなかった。

「飛鳥!もうそれ以上はダメだ!」
道彦が飛鳥を止めに入る。

「うるさい……まだまだ…終わらせない!!
椎那を……僕の椎那を、あんなに傷つけた!!
絶対!!許さない!!」
「飛鳥……
でも、ダメだ!!これ以上は、ほんとに死ぬ!」

「もう、椎那ちゃんとこに帰ってやろうぜ!飛鳥!」
「この“ゴミ”が僕の椎那を………」

「これ以上は、椎那ちゃんが悲しむよ!!」

「え……椎那?」
滉二の声に、飛鳥の動きが止まった。

その後、藤生に連絡をとる飛鳥。
「お待たせ!飛鳥」
「ごめんね…忙しいのに」
藤生が部下を連れて現れた時、飛鳥は壁に項垂れるように頭を抱えていた。

「いいよ。獅子組の為なら。
それに、平井のことの借りがあるしね!
それにしても派手にやったな!まぁ、当たり前か…!」
「藤生、あとお願いしていい?」
道彦が言うと、藤生は大きく頷いた。

「もちろん!任せて!」

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「椎那!?」
「シー!今寝たとこなの」
「さっきまでずっと泣いてて……泣きつかれたみたい」
「そっか……」
飛鳥達が屋敷に戻ると、椎那はソファで眠っていた。

「ちょっと!!みんなお風呂入ってきて!」
突然清美が、声を張り上げた。

「は?」
「そんな格好で、椎那に会うの?」
「え?」
「皆さん、血だらけっすよ!」
丈治の言葉で、飛鳥達は自分の身体を見た。
つい、先程まで村部を痛め付けていたから、血がかなり飛んでいた。

「四人共、お風呂入ってきて!」
「うん」

みんなのシャワー後も椎那は起きなくて、また後日みんなで飲もうと話し、解散した。

飛鳥は椎那を抱え、部屋に戻りベットに寝かせた。
腕枕をして、抱き締め飛鳥も横になる。
頭を撫でながら、
「椎那…もう終わったからね……大丈夫だからね…」
椎那の頬を撫でた。

【ホテルに連れてかれて……服引き裂かれて、キスマーク付けられたらしい】
清美の言葉がこだまする。

今すぐにでも抱いて、あんな“ゴミ”が触れたとこを全て僕で塗り替えたい。

今すぐに━━━━━━━━

「う……。
オエッ…!!!
はぁはぁ…」
飛鳥はあまりの気持ち悪さに、トイレで吐いた。
そして、その場に崩れ落ちた。

自分以外の男が、椎那に触れた。
しかもあんな“ゴミ”が━━━━━━━

飛鳥は、耐え難い嫌悪感が押し寄せていた。

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