死ぬ前にしたい1のコト
「大体、連れの男は? 一華さんに気がありそうだったじゃん。あいつなら、セックスだけじゃなくて、ちゃんと恋愛できたんじゃないの」

「あ、ユウは、その……全然そんなんじゃないよ。だって……女の子に興味ないから」


言おうか迷ったけど、本当のことを言ってしまった。
胸の中に押し込んだつもりの言葉がバレて、気まずそうに目を逸られてしまったから。


「……へえ。じゃあさ。結局一華さんは、まだ困ってるわけだ。要は、さっさとしときたいんでしょ」

「そ、それは……」

「もう、この上どこに照れるとこあんの。好きになったり好かれたり、そんなのもう無理かもしれなくても。とりあえず、ヤりたいでOK? ……俺に嘘吐かなくていいじゃん。ね……一華さん。本当のこと言って? 」


乱れた跡を見せつけるように、髪を整えられる。


(な……に、これ)


「恥ずかしがったり、純情ぶることないでしょ。俺はその為にここにいるんだよ。今はどうだか知らないけど、少なくとも昨日の夜までは。ただ、一華さんが寝ちゃって、未遂に終わっただけ。そんな男相手に、何の演技も気遣いも要らないよね」


それなら、これは何なの。
わざと私の視界に入るように、髪を掬って。
黒目が捕らえたら、今度は耳の形をなぞるようにその髪を掛けて。


「その顔。そうは言ってもさすがにさ、今この瞬間入るってできないって。だから、こんなこともしちゃうかも。何してもいいって言われたけど、俺そういう趣味ないし。一華さんの好みとスピードに合わせる」

「……………その代わり? 」


そっちこそ、「あ、バレた? 」……なんて、下手で要らない演技挟まないでよ。


「しばらくここにいていい? いや、ちょうど今月ヤバくて困ってたんだよね。……ってことで、俺の面倒見てね」

「……って、ヒモ志願!? 」


困る困る困る。
部屋、広くないし。
一夜どころか、四六時中一緒にいるとか。
そのうち寝食だけじゃなく、他にも集られようものなら破産してしまう。


「人聞きの悪い。れっきとした交換条件。世話になる代わりに、俺も一華さんのお世話するんだからさ。……で、早速だけど俺、何したらいい? コドモの俺に教えてほしいな」


寝顔は子供みたいに天使。
なのに、半分瞼を閉じかけただけで、これほどの悪魔面ができといて、よく初めてとか言えたものだ。


「も、もういい……!! いいから、どうか速やかにお引き取……」

「えー、そんなこと言うんだ。年下の男にこーんなに期待させといて、しかもまだベッドにいるっていうのに捨てちゃうの酷いよ。そんな悪いおねえさんは……」


――社会的追放、されちゃうかもね?


「……………しゃかい、ついほう…………?」


…………とは?
逮捕、なんて甘い言葉、使わないとは?


「俺、すっごく傷ついたんだもん。仕返ししちゃいたくなる。一華さん、三十歳だもんね。えーと、いち、にー、さん……ん、七歳差。成人はしてるけど、この前まで学生だった初な男の子を騙して連れ込んだって周りに知られたら、どうなるかな」

「で、でも、言ったじゃない。双方大人の合意の上……」

「……だけど、計算したらさ。一華さんがハタチの時、俺は……んっと、いーち、にー、さん……? 」


(うっさいな!! そんなの数えなくたって、じゅう…………)


――やっぱ、まずいわ。


「ん、可愛いおねえさんはいいですね。何かしてほしくなったら言ってよね? 疲れた時とかー、寂しい時とか。……言ったろ、その為にいんの。使っていいよ? 俺のこと」

「~~っ、遠慮しとく……!! 」


――少なくとも、今のところは。




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