強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 だから、せめて彼女だけにでもそれを伝えておこうと思う。

「すみません。昨日の夜、無理だって思い知ったので……」

「……そう」

「でも本当に、ケントにもカテリーナさんにも感謝してます。初めての海外旅行がとても楽しいものになりました」

 笑顔でお礼を言うと、カテリーナさんの綺麗な眉間にしわが寄ってしまった。


「辛い恋をしても?」

 指摘されて、改めて辛い恋だと実感する。

 でも、それでもこの五日間が無かったら良かったとは思えない。

 ケントと過ごした日々が、悪いものだとは思いたくない。


 私は泣き笑いのような表情になってしまったけれど、しっかりとそれを伝えた。


「それでも、です。ありがとうございました」

「そう、分かったわ……」

 カテリーナさんも悲し気な笑みを浮かべて、私の言葉を受け止めてくれる。



「じゃあ行きましょうか。私の車で行こうと思ったけれど、ケントを待たなくちゃいけないみたいだし……タクシーにあなたの荷物を積み替えてしまわないと」

 すぐに切り替えてチケットを渡してくれたカテリーナさんは、臨機応変にどうすればいいのかの指示をくれる。
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