強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
「あの、すみません。……私のせいで……」

 彼女が疲れてしまっている原因の一端(いったん)は私にもあると思って謝罪する。

 でも、カテリーナさんは「どうして依子が謝るの?」と少し笑った。


『むしろ依子には私からも謝らなきゃいけないのに』

「え?」

『ケント普段は饒舌だし、てっきり愛の言葉をいくらでも囁かれてると思ったのよ。それでも自信がないなら離れた方が良いと思って貴女にあんなこと言っちゃったの』

「あ、そうだったんですか……」

『まさか好きの一言も言っていなかったなんて……本当に、不甲斐ない兄でごめんなさいね』

「…………は?」


 今、サラリと重要なことを言われたような……?


『あんな兄だけど、貴女のことは本気で好きみたいだから……これからもよろしくお願いね』

 やっぱりケントのことを“兄”と言った。


「え? あの、兄?」

『ええ、そうよ? あら? 言ってなかったかしら?』

「あれ? でも確かセカンドネームが違ったような……?」

『そうね。父親は違うから』


 父親は違うと言うなら母親は同じということだろう。
 つまり、二人は半分血のつながった正真正銘の異父兄妹ということになる。


「え、ええー!?」

 困惑するけれど、思い返せば確かに二人の親密さは兄妹と言うとピッタリな感じだった。
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