強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 あのときはツアー料金を払った時点でかなり貯金が減ったし、次の海外旅行はいつになるかな? なんて思っていたんだけれど……。


「ケントと一緒にいるおかげで、私のその夢はもう叶ってるんだなって……本当にありがとう、ケント」

「――っ」

 笑顔でお礼を言うと、息を呑んだケントがムスッと不満顔になる。


「どうして今それを言うんだ……」

「え? ダメだったの?」

 理由が分からなくて戸惑う。


「ああ、ダメだな。そんな可愛いことを言われたら抱きしめたくなるというのに、ゴンドラの上じゃあ危なくて出来ないじゃないか」

「え……」

 私がケントの言葉を理解して頬を染めると同時に、彼は抱きしめる代わりのように私の手を握った。


「それが依子の夢だと言うなら、いくらでも叶えてやる。まだ行ったことのない場所は沢山あるだろう?」

「ケント……」

「俺のそばにいてくれれば、どこにだって連れて行ってやるよ」

 そう言って、誓うように左手の薬指にキスを落とした。


「……うん。そうだね」

 誓ってくれたケントを愛しく思いながら、私も彼の左手を取った。

 その手の薬指にキスを落とし、私も誓う。


「私はケントのそばにいるよ。これからも、ずっと……」
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