強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
エピローグ
『本当に戻っては来ないの? 心配だわ』

 そう電話口で話したのはお母さんだ。

 そこまで心配性な人ではないけれど、流石に今回のことは心配になるらしかった。


「もう、本当に大丈夫だって。気遣ってくれる人も沢山いるし、相談に乗ってくれる人もいるから」

『そうは言ってもねぇ……協力してくれる人がいないと大変よ?』

「……ケントが協力してくれない夫だと思う?」

『……思わないわね。そうね、ケントさんがいれば安心かしら?』


 両親に会う度に私への溺愛っぷりを披露しているケント。

 そんな彼だからか、両親は彼が私をないがしろにするわけがないと信頼を寄せている。


 まあ、事実ないがしろにされたことなんてないけれど。


 ケントのことを話に出したことで幾分安心出来たのか、お母さんは最後に『何かあったらすぐに連絡寄越しなさいよ!?』と念を押してから電話を切った。

「もう……」

 心配してくれるのは嬉しいけれど、その分口うるさくなって少し困る。


「義母さん、何だって?」

 電話が切れたのを見はからって、ケントが聞いてきた。

 今は夜。
 自宅のソファーでくつろいでいたところだ。


「心配だから、何かあったらすぐに連絡してねって」

 苦笑交じりに言ってみるけれど、時差もあるから日本は今早朝といったところ。

 そんな時間にわざわざかけてくれたと思うと感謝しかない。
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