強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 元々俺の滞在日数も多くて三日だった。
 一日くらい伸ばしてもいいが、それでも四日。
 依子が戻るまでにはたりない。

「ちなみにどこへ旅行に行ったんだ?」

 絶望的な気分ではあったが、少しでも情報が欲しくて聞いた。

 そうして出てきた答えに、一筋の光を見た気がする。


「あ、はい。イタリアへ行くと聞きました」

 イタリア。
 俺のホーム。

 一言でイタリアと言っても広い。

 いつどこにいるのかなんて普通は見当もつかないだろう。


 だが、ツアーなら調べれば日程も分かる。
 ある程度の検討はつくはずだ。

「カテリーナ、行くぞ。何としてでも依子を見つける」

 自分でも驚くほどの執着。
 いつもなら気になった相手がいても、ここまですれ違うようなら諦めていたのに。

 どうして依子のことは諦めきれないのか。


 やはり依子は俺のウェヌスなのか?


 求めてやまない。
 とにかくもう一度会いたかった。

 なのに。

「どこへ行くんですか? 今日は大事な契約をする予定なんですよ?」

 カテリーナの言葉にグッと詰まる。


 そうだ。
 今日は訪日の一番の目的である契約を済ませる予定なんだ。

 他のことはどうにか出来ても、こればかりは他人に任せられない。


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