強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 何にしても……。

「……ここでそれを言うのはズルイです」

 気にすることじゃないと思っていたことを意識させる言い方。
 しかももう食べてしまった。

 ズルイ、ズルイ大人の顔をしていた。


 ダメだ。
 こんな顔もカッコイイと思ってしまっている。

 ダメだと押さえつけてもドキドキするし、どんな表情を見てもカッコイイと思ってしまう。


 これは、もうすでに重症なんじゃないだろうか?

 どうしよう……いっそ期間限定の恋と思って楽しむべき?
 いや、でも私にそんな器用なことが出来るとも思えないし……。


「さ、そろそろ行くか」

 色々と悩んでしまうけれど、ケントと共にいるのが楽しくなっている私は差し出された手を素直に取ったのだった。



 映画のように、このローマは恋が始まる場所なのかもしれない。

 この恋が映画のようにここだけで終わってしまうのか、それとももっと続いて行くのか。


 それは私とケントしだい。


 私はどうすればいいんだろう?

 どうしたいんだろう?


 そこの気持ちもハッキリしないまま、共に過ごす一日目は過ぎて行った。
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