強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 髪を乾かして戻ると、当然ながらケントは仕事をしていた。
 スマホとタブレットを並べて、今日はカテリーナさんが持ってきた書類も加わる。

 このまま夜遅くまで仕事をして、また明日私の観光に付き合ってくれるのか。

 それを思うと心配になる。


 でも昨日気にするなと言われてしまったし、事実彼のわがままでもあるので何も言えない。


「……ケント、おやすみなさい」

 私が控えめに挨拶をすると、彼は顔を上げて笑んでくれる。

「ああ、おやすみ依子」

 仕事を中断して挨拶を返してくれる。
 そんな些細な事だけど、小さな喜びに胸がキュッとなった。


 嬉しくて、でも申し訳なくて。

 私はベッドに入ってからもしばらくは寝付けなかった。


 それでも眠らないという事はなく、いつのまにか私はグッスリ眠っていた。


***


 そして朝。

「……」


 どうしてだろう?

 ベッドは二つあるはずなのに。


 朝目が覚めて、心地良い温度の硬いものがあるのに気づいた。

 それがケントの腕だと気づくのに、大して時間はかからない。


 つまり、ベッドは分けたはずなのに結局一緒に寝ている状態。

 今までは大きいとはいえ同じベッドだったから、私の方が近づいたのかも知れないしと思ってあまりその事は言わなかった。
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