神、恋に落ちる
「早く!これ以上怒らせないでください」
黒崎が引きずるように男を外に出そうとする。

「で、では!
外で待ってますので、話を━━━━━」
「聞かねぇよ!お前のような非常識な奴の話を何故、俺が聞かないとならない」

「ですが!神の一声がないと、我々の会社はもう……」
「早く、出ていけ…
お前、見てわからないの?白羽、寝てるだろ?」
男は気持ち良さそうに寝ている白羽を見て、言葉にならない怒りを覚える。

こっちは一睡もできず会社の為に必死なのに、呑気に寝ている白羽に…………

男はわざとに、テーブルをガンッ!と殴った。
「ちょっ…」
黒崎が慌てて止める。

すると、白羽がビクッとして目を覚ました。
「はっ!!あ…命さ……」
「白羽!?ごめんね、起こしちゃったね…」
「ん…いえ……
…………え?お客様?ですか?」
白羽が男の存在に気づき、向き直った。

「奥様、初めまして。
三吉と申します。急の仕事の相談がありまして……突然、申し訳ありません」
三吉がその場に正座をして、白羽に頭を下げる。

白羽も慌てて命の腕の中から離れ、横に正座をして頭を下げた。
「こちらこそ、すみません!このような格好で……」

「白羽!!」
「え?は、はい!」
「俺から放れないで!!」
「え?で、でも…お仕事の話……」
「俺は仕事の話をするなんて言ってない」
「え?え?」

「神!お願いします!話を━━━━━━」
「うるせーよ!!聞かねぇっつてんだろ!?」
「み、命さん!」
「ん?何?早く!ここ、おいで?」
命が自分の膝をポンポンと叩く。

「三吉さんのお話、聞いてあげてください。
急のお仕事の相談みたいだし」
「は?何故?」
「あ、あの、私、そう!トイレ!お手洗いに行ってきますので、その間にでも……お仕事の話なら、私がいると邪魔だろうし」
白羽はしどろもどろになりながら、なんとか言葉を繋いだ。

「………いいの?俺にそんなこと言って」

「え?み、命さん…?」
「まぁ、いいや!トイレ、行っておいで?
でも、覚えておいてね!」
白羽が部屋を出ていくと、命は煙草を咥えた。
すかさず黒崎が火をつけると、三吉に向かって煙を吐いた。

ゴホッゴホッ!と咳をした三吉は、再度命に向き直り頭を下げた。
「神!お願いします!どうか、お口添えを………!」

「お前も大変だな」
「は?」
思わず、顔を上げる三吉。
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