人を愛す僕と愛せない君
大学内にあるイチョウの葉はすっかり黄色に染まり、街には秋の涼しめの風が吹いている。少し前まで半袖の夏服を着ていたこの大学の学生たちももう秋服を着て、街は完全に秋色に染まっていた。

大学の門に行くまでの道には、綺麗なイチョウ並木があって、この時期になると多くの人が綺麗な写真を撮ろうとスマホを向ける。そんな中、赤いパーカーにジーンズ、黒いリュックサックを背負った男性が走っていく。

「あのッ!」

男性が走って声をかけたのは、黒いシャツにブラウンのスカートを履いてゆっくりとイチョウ並木を歩いている女性だ。突然声をかけられ、女性はびくりと肩を震わせてから振り返る。

「好きです、僕と付き合ってください!!」

朝の通勤・通学の時間帯のため、イチョウ並木を歩いている人は多い。そんな中で頭を下げ、告白するのはとても勇気のいることだろう。

「えっ、何々?」

「やば、告白じゃん!」

多くの人が足を止め、告白の行方を見守っている。女性がゆっくりと口を開いた。
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