人を愛す僕と愛せない君
「ごめんなさい。急いでいますから」

そう言い、女性は何事もなかったかのように歩いていく。その場に崩れ落ちた男性を、知らないサラリーマンが「まあ、また新しい恋があるさ」と慰めた。



「ひどくない!?人前で勇気出して告白したのに、あんなにバッサリ振っちゃうなんて……。まあ、そういうドライなところも好きだけど」

「人前?人が大勢いれば私が頷くとでも?残念ながら、人前で告白してくれたのにかわいそうなんて考えは私にはありません。それにサラッと告白されても、お付き合いする気はありません」

大学の教室では、先ほど告白した男性と振った女性が隣同士に並んで座っていた。頬を赤く染め、めちゃくちゃ好きですというオーラを放つ男性に対し、女性は冷めた目でスマホを見つめ、決して男性を見ようとしない。その温度差は南国と北国である。

「ちぇっ」

どんなに視線を送っても、女性はこちらを見てはくれない。ようやく諦めた男性ーーー前川灯(まえがわあかり)は、女性ーーー三島雫(みしましずく)から目線を外す。
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