君に逢える日
 わかっているなら、助けろよ。

 自分に言い聞かせて、僕は男たちと彼女の間に入った。三人の男の鋭い視線が、怖くて仕方ない。

「お前、誰」
「か、彼女と待ち合わせをしていたのは僕だ」

 声が震えている。みっともない。

 それにしても『僕の彼女に何か?』とか、漫画のイケメンみたいなことは言えなかった。

 あの嘘っぽい言葉で、男たちが下がってくれるとは思えない。実際、嘘だけど。

「なんだ、一人じゃなかったのか」
「言ってくれればよかったのに」

 男たちはあっさり去っていった。案外、いい人だったみたいだ。

 僕はゆっくりと振り返る。彼女は少し驚いた表情で、僕を見上げていた。

 いつも遠くから見ていただけだったから、こんなに彼女が可愛らしいなんて知らなかった。

 それを意識した途端、僕は言葉が出てこなくなった。

 だけど、この機会を逃したら、もう二度と彼女に会えなくなるような気がした。

「あの、よかったら夕飯、一緒に行きませんか?」

 そう言って気付いた。これだと、さっきの人たちと同じじゃないか。

「いや、あの、毎年、君がここにいるのを見てて、話してみたいなとか、思って……」

 ダメだ、慌てて喋って墓穴を掘ってしまった。これだと、僕のほうが怪しい。
< 4 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop