青い時間はきみの中
放送を聞いた。

放送部のことを、少しずつ教えてもらった。

話をするようになった。

帰りの放送が終わるのを、放送室の廊下で待つようになった。


二人で選んだ朝焼けみたいな曲を聞きながら、一年が過ぎた。


青くんは部長さんになり、放送の回数と、後輩のフォローが増えた。


そうして、いつのまにか。もう一年が過ぎて、わたしたちは三年生になった。


「あれ、青くん、今日放送じゃないの?」


聞こえてきた声が違うなあ、と思っていたら、お昼ご飯を持って青くんが現れた。

放送がない日は、いつも一緒にお昼を食べる。


「ああ、俺ら引退したから」

「えっ放送部って引退するの!?」

「するでしょ。凛は放送部をなんだと思ってるの」

「放送部は放送部だよ」

「放送部は文化部のひとつだよ。大会も終わったし、三年生がいつまでも居座ってらんないでしょ」

「じゃあ、もう、青くんの放送聞けないの?」

「そりゃあ引退したからね」


なんてことだ。なんて残念なんだ。ひどい世界の損失だ。


「わたし、聞くの楽しみにしてたのにな。青くんしゃべんなくなっちゃうのかー」

「しゃべんなくはならないよ。別に、放送しないってだけで、引退しても無口になるわけじゃないじゃん」


今だって話の真っ最中、と呆れた目をするけど。


「だって青くんは放送部のイメージなんだもん。普通のお話と放送は違うでしょ」

「そりゃそうだ。放送するときみたいに普段から話してたら怖い」

「だから放送してるのを聞けないのは違和感があるの! さみしいの!」

「はいはい」


一生懸命訴えたのに、どこ吹く風。普通にお昼を広げて手を合わせている。ひどい。


ぶーぶー文句を言い募れば募るほど呆れた目をされてしまって、その日は終わり。
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