青い時間はきみの中
「青くん! 助けて!」


ドタバタ青くんを探して、姿を見つけた瞬間、叫んだ。


「は?」


駆け寄って、がしい、と手首を掴む。


「青くんの放送がない! わたし帰れない! いや後輩さんたちは悪くないんだけど、わたしが慣れてない!」


ないの三段活用である。


「え、帰れないってなに?」

「あのね、驚かないで聞いてほしい」

「もう驚いた」

「うん、わたしも驚いてる。あのね、わたしね、三年間青くんの放送を聞いて帰ってたから、耳がそっちに慣れすぎてて、他のひとだと聞き逃す」


帰りの放送は、下校時刻と最終下校時刻に二回流れる。そして、一回目の五時は、部長の青くんがすると決まっていた。


ご覧のとおり、今は六時である。最終下校時刻ぎりぎり。外は真っ暗だ。


「は? なに、……は?」

「もう一週間も聞き逃し続けてるの。だから助けてほしい」

「……えーと、凛。それ、俺に声かけに来いって言ってる?」

「そう! 来てほしい!!!」


力強く頷いた。それはもう頷いた。


ええー……と大きなため息。
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