クラスの男子が全員、元カレだった件
そして、遅れてやってきた三島志麻。
今日は彼が監督をやると、春乃ちゃんから聞いている。
三島志麻は教室に入ると早速、手頃な位置にある椅子を一つ、引っ張り出して、カメラのモニターの前に持ってきて座った。
「照明は?」
「もう出来てるよ」
「カメラの設定は?」
「準備万端だ」
まなまなちゃんと加持くんが交互に答えて、三島志麻は「ならいい」と言って、腕を組んだ。
「よし、じゃあ、そこの男と女。早速通して演技をしてみてくれ」
高橋隆人はともかく、私に対して「女」と言った三島志麻に、若干イラつきながらも、周りがそういう雰囲気になったから、すぐに春乃ちゃんに指示された立ち位置に立つ。
そして、始める演技。高橋隆人は2回くらい、私は3回くらいセリフを噛んだけど、何とか最後まで演じきれた。
それをモニターで見ていた三島志麻は、「カット!」という声をかけて、うんうんと頷き、それから「よし、このまま1カット目、いこうか」と言った。
特にアドバイスは無し。まるで私が脚本を書いてきたことなんか、忘れているみたいな態度だった。