【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「エル、アディ先生と呼んでください」

「ごめん、ごめん。いつもの癖で。その、リーンがアディ先生のこと大好きだから、言わない方がいいかな、と思っていたんだけど」
 アイリーンはそこで頷く。
「アディ先生の方から、リーンに会いたいと言ってきたのよ」

 再び、アイリーンは息をするのを忘れた。思い出したように、鼻から大きく息を吸う。

「どうして?」
 そう、どうして? なぜ、アディはアイリーンを知っている?
 アディは有名な作家で自分は作品の一ファン。自分がアディを知る機会はあっても、アディが自分を知る機会は無いはず。

「ナミカさんも言っていたけれど。月雲の六巻が発売されてから、既刊も急に増刷がかかったらしいの。それで、アディ先生がね、不思議に思って書店に尋ねたんだって。そうしたら、ナミカさんが私たちの部誌をアディ先生に見せて。それで、アディ先生が月雲紹介のページを見て大喜びで。売り上げがあがったのは、文芸部の部誌のおかげだっていう話になって。アディ先生も私が文芸部だって知っているから、月雲の紹介を書いたのは誰? って聞かれて。それで、リーンのことを言ったら、急に会いたいとか言い出して。そんな流れ。わかった?」
 頷く。ノエルの言いたいことはなんとなくわかった。月雲のポップのおかげで本が爆売れしたから、アディはそのポップを書いたアイリーンに会いたい、ということに違いない。

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