【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 王都の中心から東の方に向かっていたのは、その『はずれ』に向かっているのだろう。ゴトゴトという場所の揺れが心地よい。緊張して眠れなかったから、その揺れがアイリーンを夢の中へと誘う。
 ノエルもそれに気付いてはいたが、あえて声はかけなかった。あれを伝えてからのアイリーンの緊張がわかったから。きっと、昨日は眠れなかったんだろうな、と思う。

「着いたわよ」
 ノエルがそう言ったとき、アイリーンはすっかり夢の中だった。パッと顔を上げて、きょろきょろと周囲を見渡す仕草が可愛らしい。
「リーン。これは、現実よ」
 ノエルが上品に微笑んでいる。

「エルちゃん、久しぶりね。いらっしゃい」
 馬車を降りた彼女たちを迎え入れてくれたのは、ノエルの母親。

「お久しぶりです、お母様」
 いつものノエルと違う感じがするのは何故だろう。これが、王女様の品格というやつか。

< 165 / 365 >

この作品をシェア

pagetop