【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「モイラ、悪いけれどこれ。送ってもらえるかしら」
 アイリーンは大きな封筒を差し出した。これには書店用のポップの原稿が入っている。
「承知いたしました」

「今月末、発売なのよね」

「そうですね、楽しみにしておりますね」
 大きな封筒を大事そうに抱えたモイラは、顔をほころばせた。

「実感が沸かない」

「そうですよね。私もまさかお嬢様があの月雲シリーズの絵を描いて、さらにご自分で本まで出されるとは思ってもおりませんでした」

「私が一番そう思っているわ。とにかく濃い一年だったわ」
 アイリーンは両手を上にあげてうーっと伸びた。そしてそのまま横に倒して身体をノの字にする。

「お嬢様、あまりご無理をなさらずに」
 言いながら、お茶の準備をする。ほのかにその香ばしさが鼻孔をくすぐる。アイリーンは机から離れ、ソファに移動する。お茶を手にすると。
「うーん、いい香り」

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