【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 ノエルがその見本の小冊子を手に取り、読み始める。十ページ程度なのですぐに読み終わるのだが。

「リーン。どこを見てもロイティがたくさんいて、どうしよう。幸せ過ぎる」

 その感想にアイリーンは何も返答しなかった。周りには他の客もいるからだ。何か変なことを喋って、自分が絵や漫画を描いているアイということがバレてもまずいと思っている。

「リーン。さっさと買って、いつものカフェに向かいましょう」

 二人は予約していた本を無事手にすると、併設されているカフェへと向かう。適当に飲み物とデザートを注文して、席についた。
 読むのが楽しみね、とか言いながら本を開く。ノエルはまずは漫画本から読み始めるらしい。アイリーンはもちろん新刊の七巻から。そうなるとノエルの方が早く読み終わる。パタリと本を閉じる。

「リーン、ちょっと待ってよ」
 ノエルが口を開いた。二人が静かに読書に耽っていた時間は、三十分と少々。温かかったはずの飲み物は、もちろん冷めきっている。その冷めた液体の残りを、ノエルは喉を鳴らして飲んだ。

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