【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「座り心地が悪いのか?」

「そんなことはありません」

「護衛は誰もいないぞ?」

「そうですけど」

「せっかく二人きりなれたのだから、オレはリーンを離したくない」

 そうか、護衛がいなくて二人きりになってしまうとこんな弊害が出てしまうのか。アイリーンはあきらめて、そこからオペラグラス片手に芝居を見ることにした。
 だが、芝居が始まってしまえば、アイリーンはその世界にのめり込んでしまう。自分がどこの座っているのかを忘れてしまうほど。背中に温もりを感じるが、その温もりが鑑賞を邪魔するようなことはしなかった。

 芝居の内容も原作に配慮しつつも全年齢対象の内容。ラブよりもファンタジー要素が強めになっているが、それでも大好きな月雲の世界。いつもは脳みその中で動いていたキャラクターたちが目の前で動いているのも不思議な気分だった。ストーリーの大まかな流れは知っているはずなのに、ハラハラが止まらない。それだけ役者がキャラクターになりきっているし、物語の世界観の再現度も高いのだ。
 クライマックスのシーンでは、知らぬうちに涙が流れていた。わかってる、この後どうなるか。原作を読んでるから。それでも涙が止まらなかった。それだけ、このお芝居は良かった。

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