【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「エルと同じように呼んで欲しい」
 つまり、敬称はいらない、ということを言っているのだろう。

「私とエルは同性っですが、イブ様とは異性です。私の立場もわかっていただけないでしょうか」
 そう言われてしまうと、イブライムの方も無理強いはできない。けして彼女を困らせたいわけではなく、目に見えない距離を縮めたいだけなのだから。

「では、オレにもあなたのことを愛称で呼ぶ許可をいただきたい」
 いけしゃあしゃあとこの男は何かを言ってきた。だが、文芸部員はアイリーンのことを愛称で呼び始めている。しかも出会って二日目から。
「わかりました」
 ここで断る理由も思いつかないので、そう言うしかなかった。
 アイリーンはイブライムと並んでゆっくりと階段を下りた。そして、講堂に入ると、そのステージの上にはダンカンがいる。フランシスから預かった荷物をダンカンに手渡すと、生徒会室に戻っていい、と言われた。
 アイリーンは来た道を戻ろうとした。来た道をそのまま戻らないと、生徒会室にたどりつけないからだ。まだ、学院の建物の位置を覚えていない。

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