彷徨う私は闇夜の花に囚われて



本能的に、息ができないことへの焦りがパニックを引き起こす。


……だけど。


息ができなくたって。死んでしまったって。


別に、いい。


どうでもいいの。


ネットの人たちも、すみれちゃんも、家族も。


私が死んで困る人なんて、もうどこにも……



「―――美紅。俺の目を見て」



すぐ横から届いた、強くも圧のない声。


ほんの僅かに焦りで震えているのを感じた。


私を宥めていた大きな手が、今度は私の頬を包み込む。


澄んだ冬の夜空みたいな瞳が綺麗で、吸い込まれて。


……一瞬、息をすることを忘れた。


その隙を樹くんは見逃さない。


「ゆっくり、吸って。……吐いて。そう」


樹くんの声に大人しく従う私の身体。


呼吸も心臓もようやく落ち着いたと思ったところに、


「良かった……死んだら、許さない」


私を強く包み込み、痛みを堪えるように声を絞り出す樹くんがいて。


また、胸が苦しくなる。


心臓のドキドキと、身体への圧迫感と、いっぱいいっぱいになる心。


満たされていって……それが怖い。


今は優しくても、どうせあとで刃を向けるんだよね?


私のことを嫌いになって、憎しみに変わって。苦しめるんだもんね……?


……信じちゃダメだ。


人を簡単に信用したらダメなの。


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