彷徨う私は闇夜の花に囚われて




『もう少しだけでいいから樹くんに近づきたい』



そんな身の程知らずな願望を抱いていた頃、神様は私に幸運をくれた。


学年が上がって初めての席替えで、樹くんと隣同士に巡り合わせてくれたの。


今までみたいにこっそり盗み見ようものなら、胸に秘めた想いがバレてしまいそうで黒板ばかり見つめていたけど。


私の左半身は樹くんの存在を確かに感じ取っていて、それだけで私の心は満たされた。十分だった。


だけどしばらくすると、腐れ縁である私たちが並んで座っていることに気づいた思春期真っただ中のクラスの男の子たちが、大げさに囃し立て始めて。


『幼稚園から一緒で席も隣とか、運命かよ!』

『お前ら二人して成績いいもんな~、隠れて勉強会してたりして!』

『美男美女カップル、爆誕か!?』


くだらない煽り文句の数々。


他の人とだったら嫌だったかもしれないけど、相手が樹くんだったから私はまんざらでもなかった。


むしろ、お似合いだなんて言われて口元が緩みそうになる自分がいた。


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