彷徨う私は闇夜の花に囚われて



……ただの揶揄いで、現実じゃないのにね。


そもそも樹くんは私の存在なんて気にも留めてないはずで。


この状況に嫌気が差して内心苛立っているかもしれない。


だから、喜んでも意味がないんだって諦めて自分に言い聞かせていたのに。


私たちの関係が明確に変わったのは夏休みに入る一週間前の日のことで。


珍しく速攻教室を出て行かなかった樹くんとたまたま靴箱で居合わせ、なんとなく流れで一緒に帰ることになった。


熱気で景色がぼやけ、辺りも虫たちのせいで騒がしい中、



『―――俺たち、付き合う?』



樹くんは話の脈絡もなく提案し、私に決定権を委ねた。


樹くんの隣を歩くのに精一杯だった私は、一瞬、なにを言われたのかわからなくて。


『……え?』


アホみたいに口を開けて一文字を返すことしかできなかった。


今、なんて言ったの……?付き合うって言った?


言い方的にはどこに付き合う、みたいなベタな話じゃなさそうだし……付き合う?男女の交際?


俺たちって、私と樹くんが?なんで?


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