冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 蝶子は明るく答える。するとすぐさま扉が開き、黒留袖姿の小夜子と百合が顔をのぞかせた。ふたりともシックでとても素敵だ。

「まぁ! なんてかわいいのかしら。お姫さまみたいよ~」
「よく似合ってるわ、蝶子」

 ドレス姿を褒めてくれるふたりに、蝶子は笑顔で礼を言う。

「ふたりのおかげです。このドレス、お腹も全然苦しくないんですよ」

 ウェディングドレスに憧れはあったものの、どんなデザインを選んでいいのかさっぱりわからなかった蝶子のドレス選びにふたりは熱心に付き合ってくれた。選んだドレスはブライダル業界では著名なデザイナーの作品で、妊婦である蝶子のために細かい調整もほどこしてくれた。ちょっと桁違いに高価だったのだが、晴臣が『一生に一度の思い出なんだから』と背中を押してくれた。

「晴臣に意地悪されたら、すぐに私に言うのよ」

 百合は悪戯っぽく笑って、蝶子の肩を叩く。隣でほほ笑んでいる小夜子の瞳には涙が光っている。

「新しいスタートね。本当におめでとう」
「ありがとう」
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