月夜に笑った悪魔 (番外編)
岳は嫌がらずに足を動かして。
私の隣に並んだかと思えば、追い越して前を歩く。
私が引っ張られている状態に。
なんという早歩き。
つかんだ腕を離したらすぐに先にどんどん行ってしまいそうな勢いだ。
「ちょっ……!もう少しゆっくり歩いて……!」
後ろ姿に声をかければ、
「……さっそく足引っ張ってんじゃねぇ」
と、心底めんどくさそうな顔を向けられる。
組んでくれる気になったのはいいけど……優しさの欠片もない。
この男……っ!!
「女の子に優しくしないとモテないよ!?」
ほんの少しだけ落ちた歩くスピード。
私は必死に歩いて、小走りになって……最終的には走って岳を追い越し、また前を歩く。
けれどまた抜かされて。
ムカつくからまた追い越し、またまた追い越され……。
なんてくだらないことを何度も何度も繰り返しながらホテル内へと入ったのだった。