ちょうどいいので結婚します
功至がこんな調子なのは千幸に対してだけだった。
学生時代に公認会計士の資格は取得した。その次は社会人経験を積み、監査法人以外の会社でも経験したくて二年前に今の会社へやってきた。
千幸への第一印象は“綺麗な人”だった。年頃の男らしく、単純に職場に綺麗な人がいてラッキーくらいなもの。経理部は落ち着いた人が多い。その中でも一際、静かな人だった。見た目は華やかでつい目が行ってしまうのに、まるで息を殺してそこにいるような人だった。
自分の歓迎会にも千幸は来てくれなかった。あまり社交的な人ではないのだろうか。その訳は、他の人から聞くことになった。千幸は自分は社長の娘だからと自分で気を使ってしまうのだと。部内は気のいい人ばかりで千幸が社長の娘であろうと煙たがっている人はいなかった。
それは千幸が鼻にかけることもなく堅実に業務をこなしているからだ。むしろ気遣いから多くの仕事を引き受けすぎている傾向にあった。
一生懸命で健気な姿に、もう少し楽に仕事をすればいいのに心配していた。
ある日、部署の人たちと飲んで帰ることになった。千幸も誘ったが、
「私が行くと……いえ、まだ仕事が残ってますので」と、断ってきた。
「手伝うから、来てよ」
やや強引に連れ出すと、戸惑いながらもついて来た。一番端の席に座り、ここでも皆の気配りをしている。同僚なんだからそんなことしなくても……と、つい彼女ばかりを見てしまっていた。
学生時代に公認会計士の資格は取得した。その次は社会人経験を積み、監査法人以外の会社でも経験したくて二年前に今の会社へやってきた。
千幸への第一印象は“綺麗な人”だった。年頃の男らしく、単純に職場に綺麗な人がいてラッキーくらいなもの。経理部は落ち着いた人が多い。その中でも一際、静かな人だった。見た目は華やかでつい目が行ってしまうのに、まるで息を殺してそこにいるような人だった。
自分の歓迎会にも千幸は来てくれなかった。あまり社交的な人ではないのだろうか。その訳は、他の人から聞くことになった。千幸は自分は社長の娘だからと自分で気を使ってしまうのだと。部内は気のいい人ばかりで千幸が社長の娘であろうと煙たがっている人はいなかった。
それは千幸が鼻にかけることもなく堅実に業務をこなしているからだ。むしろ気遣いから多くの仕事を引き受けすぎている傾向にあった。
一生懸命で健気な姿に、もう少し楽に仕事をすればいいのに心配していた。
ある日、部署の人たちと飲んで帰ることになった。千幸も誘ったが、
「私が行くと……いえ、まだ仕事が残ってますので」と、断ってきた。
「手伝うから、来てよ」
やや強引に連れ出すと、戸惑いながらもついて来た。一番端の席に座り、ここでも皆の気配りをしている。同僚なんだからそんなことしなくても……と、つい彼女ばかりを見てしまっていた。