ちょうどいいので結婚します
 はた、と二人顔を見合わせた。
「「孫……」」

「可愛いに決まってる」
「異論はない」
「じいじ、散財の予感しかしない」
「じいじ、散財の準備は出来てる」

 二人の脳裏に可愛い孫がよちよちと歩いている姿が浮かんだ。じいじ~!と両手を上げて駆け寄る姿は、何と愛らしいものか。……どっちのじいじい抱きつくのだろうか。そこまで想像すると、はた、と二人顔を見合わせた。

「ううむ」
「ううむ」
 二人の間に小さな火花が散った。

 
――功至と千幸が婚前旅行から帰ってくると両家顔合わせ食事会が行われた。午前中から酒を飲んで、始終和やか……、賑やかになったその中で、上機嫌の父親二人は
「良縁だ」「ちょうどいい結婚だ」と言い続け、母親二人は苦笑いしていたが、功至と千幸は顔を見合わせて吹き出した。

「《ちょうど良かった》んだよね、俺たちも」
「そうそう。すごく、ちょうど良かったの」

 千幸が功至に同意すると、功至は千幸を引き寄せそっと耳打ちした。

「だって、俺も千幸(ちゅき)ちゃんも、ずっと好きだったんだもんね」
「ほんと、ちょうどよかった。何もかも」
 別に耳打ちしなくとも、二人の会話は両親には聞こえないだろう。

「とんとん拍子で!」
「こんなにうまくいくとは!」
 賑やかだった。

「色々あったね、千幸(ちゅき)ちゃん」
「ね、でも今は幸せ」
 もう少しだけ、千幸は功至に身を寄せた。


 それから、どうしてか勇太郎は愛一郎の事を『唯一無二のライバル』と呼んでいて、功至は首を傾げたのであった。
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