ちょうどいいので結婚します
「……とにかく、小宮山さんがどう言うか、そんな勝手に決めるのは、」
 功至は明らかに戸惑っているようだった。
「いや、向こうも乗り気でな。もう承諾を得ている」
「……え」
「どうする?」
「する」
「そうか。やはり駄目か。しかしな、えぇ!? お前……今何て」
勇太郎は聞き間違いかと目を見張った。

「する」
功至は深く頷いた。

勇太郎はなぜまた息子が即答したのか大変に驚いたが、ここであれこれ言って気が変わってはいけないと思い、とにかく向こうに功至が承諾したことを直ぐに伝えることにした。

功至はそこから上の空で、時折恍惚とした表情を浮かべていた。

勇太郎は肩の荷を下ろした。愛一郎の娘が承諾したというのに自分の息子が断るようなことがあれば、もっと愛一郎を落ち込ませることになるだろう。

何より、あの息子が相手が愛一郎の娘だとわかると間髪入れずに頷いたのだ。こんな嬉しいことはあるだろうか。長年の頭痛のたねが消えようとしていた。

勿論、家に帰るとすぐに妻に報告した。妻は飛び上がって喜んだが、あまり二人のことに口出さないように忠告した。二人以外が原因で破談になっては意味がない。妻は勿論と頷いた。

面識のある二人なのだ。後は本人たちに任せるしかなかった。勇太郎は嬉々として愛一郎にそのことを伝えたのだった。

勇太郎の声も愛一郎の声も今まで聞いたことがないほど弾んでいた。
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