雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
「まぁ、朝比奈以外の人にも言われたけどね」
津田先生は楽しそうに話をしていたけど、何故か目線は朝陽さんにいっていた。
「ねぇ、朝比奈は外回りもするの?」
「いえ、私は内勤です」
「あっ、この間まで3ヶ月間は、神崎に同行して出張研修したんだよ。いい勉強になっただろ?」
長井さんに言われ、そのまま恋人同士になりました、なんて言えなかった。
「はい、とても勉強になりました」
「じゃあさ、俺がいる間は、俺が色々指導するよ。なっ、朝比奈」
「えっ?」
「おぉ、それはいい話だ。津田に教えて貰える機会なんてそうそうないぞ。本社にいて津田に指導してもらえるなんて、朝比奈、ラッキーだぞ」
「はぁ・・・」
朝陽さんを見ても、こっちを見ずにお酒を飲んでいた。
「そうだなぁ、その代わり、こっちにいる間、朝比奈は、俺専属のサポーターな。いいですよね、長井さん」
「まぁ、指導してもらえるし、昔からの繋がりもあるわけだし、頑張れ、朝比奈!」
勝手に進んでいく話に、私は苦笑いするしかなかった。

飲み会も終わり、各支社の人達は、予約しているホテルへと戻っていった。
「気を付けて帰れよ。朝比奈」
「はい。津田先生も」
「津田先生はやめろ」
「えっとー、津田さん」
「あぁ、おやすみ」
津田さんは、頭をポンポンとして、帰っていった。

振り返ると、朝陽さんがこっちを見て、立っていた。
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