雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
津田とのこと、俺が知らないと思って嘘つくのか?
「俺、津田と2人で傘に入ってるところ見てたぞ」
『それは、』
「俺に嘘つくんだな、美咲。よく分かったよ」
美咲は俺に嘘をついた。
それが美咲の出した答えなんだ。
信じていたのに。
もうそれ以上は聞きたくなくて、電話を切った。
何度も美咲から電話があったけど、取らなかった。

何もする気にならなくて、料理も途中で止めて、横になっていると玄関の開く音が聞こえた。
「朝陽さん・・・」
「何しに来た」
「だって、朝陽さん、話聞いてくれないから、今日は」
「俺には、他の女と相合い傘は嫌だって言ったよな。自分はいいのかよ。それに嘘ついただろ?俺に隠さないといけないことがあったからだろ?」
「ち、違います。だからあれは、」
「もういいよ、早く行けよ、津田のところに」
俺は美咲に背中を向けた。
信じていたのに・・・
津田のことで嘘をついたのが許せなかった。

美咲はそれから何も言わず、合鍵を置いて家を出て行った。
これで良かったのかもしれない。
津田は俺と違って穏やかだし、あいつなら美咲を幸せにできる。

明くる日になり、美咲は会社を休んでいた。
今日は津田が帰る日。
タイムリミットぎりぎりで俺は美咲を奪われた。
「返せって言われても返さない」
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