雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
神崎さんが嫌味を言わないことで、緊張感が増してきた。

座席に座り、神崎さんは、私の横でパソコンを開けて仕事している。
新幹線が動き出してしばらくすると、昨日寝れなかったせいか、睡魔が襲ってきた。
緊張しているのに、それ以上に睡魔が勝ってきている。
緊張感を高めるために、私は、書類に目を通していた。
でも、何をしたところで睡魔との戦いに負けそうで、何度もうとうとし始める。
神崎さんを横にして眠ったら、何を言われるやら・・・
睡魔と必死で戦っていた。

「朝比奈」
「はいっ」
怒られる!そう思った時
「起こしてやるから、寝てろ」
意外な言葉にびっくりして神崎さんを見ると
「何?」
「いえ、怒られるのかと・・・」
「睡魔と戦う顔した女の、横にいる俺の身になれ」
「す、すみません」
一瞬、優しい言葉にどきっとしたのに、どきっとした私の気持ちを返して欲しい。
意地でも起きていたい。
でも、睡魔は私の思いとは関係なく襲いかかる。
とりあえず10分、目を閉じるだけでも、ましになるかも。
私は10分間だけ目を閉じることにした。

「朝比奈、朝比奈!」
その声にはっ!として起きると、1駅前に着いていた。
「そろそろ起きろよ」
意識が戻った私は、10分のはずが、ずっと寝てしまっていたことと、神崎さんの肩にもたれかかっていたことに、背筋が凍った。
「す、すみません、神崎さん!」
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