雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
「勘違いですよ。私は津田さんの実習生の時の生徒の1人ですから。それに、再会した時は朝陽さんと付き合ってましたよ」
「今日、美咲さん達が来た時もね、凄く楽しみにしてたのに、2人の姿が見えた時、どこか寂しそうだったの」
「神崎さんを取られたって思ったんじゃないですか?あの2人同期ですし、今、仕事で頻繁に連絡してるようですし」
「そうね、そうよね。変なこと言ってごめんなさい」
万里さんが申し訳なさそうにするのを見て
「嘘ついてごめんなさい、万里さん」
そう心でつぶやいた。

津田さんが九州に帰るからと、2人で買い物に行ったあの日。
「朝比奈、ソフトクリームだって」
「あぁ、食べたい!津田さんは?」
「朝比奈の分、半分食べる」
「そ、それはダメですよ!私1人で食べますから」
私は、ソフトクリームを1つ頼んだ。
「ケチだな・・・じゃあ一口だけ」
「仕方ないですねぇ、スプーンついてますから、1口だけ食べていいですよ」
「えーっ、食べさせてよ」
「もー、朝陽さんに怒られるじゃないですか!」
「お願い!俺、荷物で手がいっぱい」
仕方なく、私はスプーンで津田さんに一口食べさせてあげた。
「うん、おいしい!もう1口だけ」
「もーっ!」
そう言いながら、ふと、高校生の頃のようないたずら心が出て来て、わざと津田さんの口元に近づけた時、唇の端にクリームを付けて、津田さんの口に入れた。
「こらっ!」
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