惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
3:既成事実を作りたい
 私はもう片方の手で惚れ薬の入っていた小瓶を掴み、ルーカスの目の前に突き付けた。

「っていうか、そもそもなんでこれを飲んだわけ?」

 私の問いに、ルーカスは一瞬沈黙したが、いつもの無表情な顔で口を開いた。

「・・・エリーゼが捨てるって言ってたから・・・」

「いや、捨てるからって、なんであなたが飲むのよ?」

「・・・もったいなかったから」

 もったいなくて惚れ薬を飲む奴がいるかーい・・・

 たしかにルーカスは普段からちょっと変わってる所があるし、何を考えてるのかよく分からない行動も多いけど・・・まさかここまでとは・・・。

 どうせ惚れ薬の効果が気になったとかで深く考えずにさっさと飲んでしまったのだろう・・・
 まあ、それはそれでルーカスっぽいというかなんというか・・・

「はあ・・・」

 私は大きくため息をつき、緩んでいたルーカスの手の中から私の手を抜くと、頭を押さえながら、反対側のソファーに移動し、倒れ込むように横になった。

「エリーゼ・・・大丈夫か・・・?勝手な事をしてすまなかった・・・」

「いいのよ・・・私がこんな所に惚れ薬なんて置きっぱなしにしてたのがいけないんだから・・・」

 ルーカスが私を気遣う様に声をかけてくるが、振り返ることなく言葉だけ返した。

 なんだかどっと疲れた・・・本当に・・・ユーリはなんて物を送り付けてくれたんだろうか・・・
 昔からイタズラ好きな性格だったけど、もしかして今回のこれも彼女の嫌がらせなの・・・?
 
「それじゃあ、俺と結婚してくれるか?」

 ガクッ・・・。
 気持ちの切り替えが早すぎるルーカスに、私の頭はついていかず、さらに脱力した。

 いくらせっかちな性格とはいえ、なんでそんなに早く結婚したがるのだろうか・・・?

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