惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
14:この状況を説明してほしい(ダンside)
 エリーゼ嬢がとんでもない誤解をし始めたと思ったら、何故か怪奇現象のごとく次々と色んな物が落ち始めて、最後に半裸の女性がこんにちは。
 何これ。不思議なからくりスイッチでも誰か押したの?

 ・・・あ、ちなみに最後に出てきた女性、僕の妻です。

 いやあ、僕の妻が僕の仕える主人の寝室から半裸で出てくるなんて、不思議な事もあるもんだなぁ・・・ってなるか!!誰かこの状況を説明してくれ!!

 半裸の僕の妻ことユーリは夫の僕に目もくれず、傲慢な態度で玉座に座ったまま、ルーカスに軽蔑の眼差しを送っている。

「ルーカス、まずは私に謝りなさいよ。『影』なんか使って私を拉致監禁なんて・・・あんまりじゃない?せっかくあなたに協力してあげたってのに・・・」

 ・・・え、なにそれ。そんな事件起きてたの?

 あ・・・さっきの顔面に引っ掻き傷をつけられてた奴・・・あいつユーリを攫う時にあの傷を付けられたって訳か。
 無理もない、ユーリの爪は有事の際に備えて、いつでも反撃出来るように常に研ぎ澄まされている。
 おかげで俺の背中は傷だらけだが・・・。

 ・・・コホンっ・・・今はそんなこと考えてる場合じゃなかったな。
 
「何あんたニヤニヤしてんのよ。気持ち悪っ・・・ていうか、なんか老けた?白髪増えたんじゃない?」

 ようやく僕を見てくれたユーリが、なかなか棘のある言葉で僕を叩いてくるが問題ない。いつもの事だ。

 ちなみに僕はMではないよ。

「やはりお前の計画にのった俺が間違っていたな・・・」

 ルーカスは自分の椅子に腰掛け、頭を抱えて苦悩し始めた。
 そんな姿を見るのはあの時以来だ。
 エリーゼ嬢にプロポーズを拒絶され、絶望の淵に立たされたあの時・・・。

「あら?全部私のせいにするわけ?」

 ユーリは鋭く氷のように冷たい視線をルーカスに送っている。

「・・・・・・いや・・・俺のせいだ・・・」

「分かってんじゃない」

 ユーリは鼻で笑い、「よくできました」と言わんばかりに満面の笑みを見せた。
 その姿はまるで躾が成功したペットを褒めているように見える。
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