惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
0:彼女との別れ(ルーカスside)
――――いつか首都に戻り、俺を見下してきた奴らを見返してやる・・・という俺の野望は、エリーゼと共に過ごすうちにどうでも良くなっていた。
 彼女とこのまま村で一緒に居られれば・・・それだけで俺は心が満たされていった。


 この村に来てから、1年経った時のことだった。
 村の女性が、首都に住む貴族男性の家へ嫁ぎに行くと聞き、俺はエリーゼ、ユーリと共に見送りに行った。

 首都へ向かう馬車を、エリーゼはキラキラと瞳を輝かせながら見つめていた。

「私も大きくなったら首都に住んでみたいな。綺麗なドレスを着て華やかなお茶会や夜会に行くの」

 そんなエリーゼの言葉を、ユーリは面白そうに目を細めて聞いていた。

「あら、エリーゼにしては贅沢な夢じゃない?それなら首都に住む貴族の男と結婚しないとダメよ。それも爵位持ちの男とね」

「・・・」

 エリーゼが・・・他の男と・・・結婚・・・?

 その瞬間、俺は胸にぽっかりと穴が空いてしまった様な大きな失望感と、まだ存在しないはずのエリーゼの結婚相手に対する激しい嫉妬で胸が張り裂けそうになった。
 父親が失踪した時も、使用人に裏切られた時も、こんなに感情が大きく揺さぶられる事はなかった。

 エリーゼが誰かの者になる・・・?俺のエリーゼが・・・?

 頭の中は不快な警告音が響き渡りクラクラと目が回った。
 いたたまれなくなった俺は、ふらつく足でその場から離れようと、数歩後ろへ下がった時・・・

「ルーカス、どうしたの?」

 エリーゼが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
 目の前に現れたエリーゼに見つめられ、少しだけ俺は冷静さを取り戻すことが出来た。

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