惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「あ・・・。・・・エリーゼは首都に住みたいのか?」
 
 俺の問いかけに、エリーゼは満面の笑顔を弾かせた。

「うん!小さい時に1度だけ行ったことあるんだけど、凄い綺麗で素敵な所だったの!だから首都で暮らすことは私の夢なんだ。あとね、首都には魔法使いがいるんでしょ?夜空に舞うあの魔法の光をもっと近くで見てみたいの」

「・・・そうか・・・」

 エリーゼの後ろでは、ユーリが「どーすんのコレ?」と言いたげな様子で俺をジトッと見ている。

 夜空に上がる花火の事を、首都に住む魔法使いが放っている魔法の光だと俺が言ってしまったからだ。
 エリーゼが喜ぶと思って、咄嗟に言ってしまった嘘であった。

 確かに、首都にはこの村に無いものが沢山ある。
 だが・・・エリーゼは首都に夢を見すぎている。
 首都に住んでいるからと言って、全ての人間が優雅な暮らしをしている訳では無い。
 貧困差だってあるし、貴族同士の醜い争いもある・・・少し道を外れれば危険な場所も多い。
 もちろん、魔法使いなんていう者も存在しない。

 だけど、エリーゼがそれを夢だと笑うのなら・・・俺は彼女の願いを叶えたい。
 だが、金と欲に塗れた下衆な貴族なんかにエリーゼを嫁がせる訳にはいかない。
 
 それならば・・・俺がエリーゼと結婚して彼女の願いを叶え、誰よりも幸せにしてみせる。

 そう決意した瞬間、俺の頭の中に響いていた警告音は祝福の鐘の音に変わり、溢れそうな程の幸福感で胸が満たされていった。
 
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