惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 俺は彼女に相応しい結婚相手になるべく、再び首都に赴き、確固たる地位を手に入れる事を決心した。

 当然、それは簡単なことではない。
 最近は勉強もろくにしていなかったし、首都で暮らすお金もなかった。
 それでも、俺は出来うる限りの努力をし、教材を掻き集めて寝る間も惜しんで勉強に励んだ。

 首都にある名門アカデミーの入学試験で首席の成績を残せば、授業料と学生寮の費用が免除される。
 首席以外の合格では学費が払えない・・・それは不合格と同じことだった。
 何のアドバンテージも無い平民の俺が、首都で成り上がっていく為には、それくらいのハードルは越えなければいけなかった。

 全てはエリーゼのために・・・。
 エリーゼの夢を叶え・・・そして、彼女とずっと一緒に居たいという俺の願いを叶えるため・・・。

 だが、エリーゼは・・・本当に俺で良いのだろうか・・・?

 そんな迷いが、俺にあの言葉を言わせる勇気となった。
 
「エリーゼ・・・僕とずっと一緒にいてくれる?」

 10歳になった俺は、いつも一緒に遊んでいた大樹の下で、エリーゼにその質問を投げかけた。
 その言葉に対するエリーゼの反応は早かった。

「うん!私がずっと一緒にいてあげるね!」

 そして左手の小指同士を絡め、約束をした。

 絡めた左手の小指はジンジンと熱くなり、エリーゼの言葉と、その笑顔が俺の心に刻まれた。
 彼女のためならなんだって出来る・・・本当にそんな気がした。

 
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