惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 その男はうっすらと笑みを浮かべ、俺を見くびる様な視線をこちらに向けている。

「ルーカス兄さんだって・・・6年前にエリーゼ姉さんにプロポーズを断られたのに、まだ未練があるの?見込みなんて残ってないだろ?」

「さあな・・・エリーゼがオムツを変えてた赤ん坊と結婚するよりは見込みがあるんじゃないか?」

 それを聞いたライオスは不快に顔を歪ませ、俺を睨みつけた。だが、すぐに鼻で笑い飛ばし、再び気持ち悪い笑みをうかべた。

「どうかな?さっきのエリーゼ姉さんの反応を見る限り、僕はこの3日間で少しは異性の男として見てもらえる様になったみたいだよ?」

 コイツ・・・3日も前からここに来ていたのか・・・。
 いつもならエリーゼの様子を『影』に確認させていたが、ここ数日は別の仕事をしてもらっていたせいでこちらへの警戒を怠っていた・・・。

 くそっ・・・油断したな・・・。

 この3日間をどう2人が過ごしたのかが気になり、苛立ちで冷静さを失いそうになる。そんな俺に、ライオスは不快な笑みを浮かべたまま言葉を続けた。

「ルーカス兄さんはこの数年でエリーゼ姉さんと築けた関係がただの仕事関係だって?随分とのろまな進展だね。いや・・・幼馴染から仕事関係になるって、後退しちゃってるよね。仕事がなくなったらただの他人じゃないか」

 ライオスは明らかに俺を挑発するような言葉を並べて攻撃してくる。
 だがそんな事にいちいち食いつく様なガキではない。
 
「そんな事、お前には関係ないだろ」

「じゃあ僕がエリーゼ姉さんにプロポーズした事も、ルーカス兄さんには関係ないよね。だから邪魔しないでくれないかな?手紙の返事が一向に来ないから随分ヤキモキさせられたよ」

「そういうセリフはエリーゼに相応しい男になってから言うんだな。北の辺境伯が取った養子はお前だけじゃないだろ?こんな所でうつつを抜かしてていいのか?」

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