惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
1:惚れ薬を飲んだ男(ルーカスside)
 ライオスと言葉を交わした日、首都へ戻った俺はその日の仕事を瞬殺で仕上げ、ユーリの住んでいる屋敷へと向かった。
 俺を出迎えた執事が「食事中なので少々お待ちください」と引き止めるのを無視して、俺は夕食を堪能しているユーリの元へ押し入った。

「お前の持っている薬を今すぐよこせ・・・」

 俺は切羽詰まったように血走った瞳で、フォークを手にモグモグと口を動かすユーリに詰め寄った。
 ユーリは落ち着いた様子でゴクリと口の中の物を飲み込み、グラスの水を1口飲むと、ふうっと息を吐いた。

「・・・惚れ薬を使えとは言ったけど、そっちの薬を使えと言った覚えは無いわよ。アンタの求める薬がここにあるはずないでしょうが」

 何を勘違いしたのか、ユーリは罪人を見るような憐れみの眼差しを俺に向けている。

「だからその惚れ薬をよこせと言っているんだ」

「・・・・・・ああ。そっちの事ね」

 そっち以外に一体何がある・・・。

 そんなやりとりの末、惚れ薬を手にした俺は万全の状態でその時を迎える準備をする必要があった。
 数日先の仕事を前倒しして全て片付け、何かと邪魔になる公爵の罪を白日(はくじつ)(もと)に晒して追い詰めていった。
 エリーゼと2人きりになる状況を作るため、同居している彼女の両親には、首都で新しくオープンする予定のホテルに招待客として泊まらないかと提案した。
 突然の俺の話に、エリーゼの母親は何かを察したのか「ついに決心してくれたのね」と涙ぐんで快諾した。

 問題の惚れ薬をどうやって使うかは、不本意だがユーリの案を採用する事にした。

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