惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 俺は惚れ薬を手に取り、蓋を取ろうとした時、僅かに残っていた理性がその手を止めさせた。

 本当にこれを使ってしまえば、俺達の関係は良くも悪くも変わってしまう・・・。
 本当にそれでいいのか・・・?
 もしもこれを使わずにエリーゼに告白したとしたら・・・?

 そもそも、エリーゼはこれを見て何を思ったのだろうか・・・使ってみようとか考えたのだろうか。
 ・・・使いたいと思う男がいたのか・・・?

「惚れ薬・・・」

 気付くと俺はその瓶に書かれている文字を口に出してしまっていた。
 エリーゼはビクッと肩を跳ねさせ、その手に持っている箱を抱き締めるように小さく震えている。

「あ・・・ああ!それね、ユーリが勝手に送ってきたのよ。私にどうしろっていうのよねぇ?使いたい相手もいないから捨てるしかないよね!あははははは」

 使う相手がいないと言いながらも、エリーゼが明らかに動揺しているのは分かる。それはこの薬を使おうとしていたからか・・・?
 使いたい男がいた・・・?ライオスの件もある・・・俺の知らないうちに他にもエリーゼに近寄る男がいたのかもしれない。

 もうすでに、エリーゼを迎えに来る運命の王子が彼女の傍に・・・?

 その瞬間、僅かに俺を繋ぎ止めていた理性は一瞬にして消え去った。

 俺は惚れ薬の蓋を即座に取り、一気に飲み干した。
 口に含んだ液体は味も無く、水のようにサラサラとしていて乾いた喉を潤した。
 空になった小瓶をテーブルの上に置き、エリーゼがこちらに来るその時を待った。

 あとはエリーゼと3秒間、目を合わせる・・・そしたらエリーゼは俺の事を好きになるはず・・・。
 ・・・・・・惚れ薬の効果で・・・。

 一瞬、よぎった虚しさが氷の矢となり俺の胸を突き刺し、ツキンと痛みを与えて溶けていった。
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