惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 正直、ここまでエリーゼの理性が強いとは思わなかった・・・。
 俺を好きになったら、すぐに結婚を快諾してくれると思っていた。
 ・・・だが、惚れ薬の効果は一時的なものだと言うのならば、こちらも悠長な事は言ってられない。
 事態は急を要する・・・。

 ・・・とにかく今すぐにでも結婚するしかない!

「それじゃあ、俺と結婚してくれるか?」

 俺の言葉を聞いたエリーゼは、ソファーに顔がめり込む程にまで深く沈んだ。
 しばらくして、エリーゼは重力に逆らう様にゆっくりと体を起こし、俺と向き合うよう座り直すと、キッと力強く顔を上げた。

「とりあえず待ってちょうだい。今は惚れ薬の効果で好きな気持ちが強いかもしれないけど・・・出来ればその効果が切れるまでは待ってほしいの。それか・・・解毒剤が手に入るまで・・・」

 解毒剤・・・?
 その言葉に俺は崩れ落ちそうになる。
 そんな物まで存在してしまっては、もはや計画が水の泡である。
 これは一度ユーリに確認する必要がある。

 もちろんエリーゼの言う惚れ薬の効果が消えるまで待つなんて事も出来ない。
 何よりも、惚れ薬の効果が切れた時、俺は嫌われてしまうのではないか・・・?
 どうする・・・?
 どうにかして惚れ薬を手に入れて、それを使い続けて効果を引き伸ばすか・・・?

「・・・そのまま効果が切れなかったら・・・?」

「そうね・・・とりあえず1ヶ月・・・1年は待って・・・それでも効果が切れなかったら、その時は・・・考えましょう」

 1年・・・いや、たとえ1ヶ月でも長すぎる・・・。
 この惚れ薬が他に存在するとは限りない・・・出処(でどころ)を突き止めれば、もしかしたら手に入れることが出来るのかも知れないが、こんな薬がそう大量に出回っている筈が無い。

 もしも惚れ薬の効果が1日にも満たないのであれば・・・1ヶ月も効果を持たせるなんて、到底無理な話だ。

「1ヶ月・・・?それはさすがに待てないな・・・」

 ならばどうする・・・?
 どうしたらエリーゼは俺と結婚してくれる・・・?
 結婚さえしてくれれば・・・もし惚れ薬の効果が切れたとしても、俺とずっと一緒にいてくれるんじゃないか・・・?
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