惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 もう一度・・・約束を交わせられたのなら・・・。

『なんならそのままヤッちゃっても許してくれるんじゃない?』

 突然、俺の頭の中に再び悪魔の囁きが聞こえてきた・・・。

 いや、それはさすがに駄目だろう・・・
 ・・・だが・・・。
 もし・・・もしも誰か他の男が同じ惚れ薬を手に入れ、それをエリーゼに使ったとしたら・・・?
 ユーリが言うようなゲスな考えで、そのままエリーゼを襲うかもしれない。

 そんな想像をしてしまった俺は、爪が深く食い込む程両手の拳を握りしめ、怒りに肩を震わせた。

 エリーゼが他の男に触られるなんて・・・そんなの絶対に許せるはずがない。
 想像しただけでその男の首を即座に切り落としたくなる。

 そうなるくらいなら・・・。

「ならば・・・仕方ない。これだけはやりたくなかったんだが・・・」

 俺は意を決して立ち上がり、エリーゼが座るソファーへ移動した。

「え・・・何?」

 あからさまに警戒する様に身構えるエリーゼの隣りに座り、その瞳をジッと見つめた。
 そしてその華奢な両肩に手を乗せ・・・

「エリーゼ・・・」

 愛しくその名を呼びかけると、エリーゼの顔は一瞬で火がついたように赤くなった。
 その瞳からは戸惑いと喜びの感情を読み取る事が出来る。
 どうやら俺の意図は察してくれたようだ・・・ならば話は早い。

「ま・・・待って・・・」

 顔を真っ赤に染めながらも、何かに期待するエリーゼを見て完全にスイッチが入ってしまった俺は、待てるはずもなくエリーゼに顔を近付けていく。
 今の俺に恐れるものは何も無い・・・エリーゼの気持ちは俺に向いているのだから・・・。

 程なくして、エリーゼの瞳は覚悟を決めたようにギュッと閉ざされた。
 それを承諾の合図と捉えて、俺はエリーゼをソファーに押し倒した。

 その瞬間、パチッとエリーゼの瞳が見開いたが、目の前で無防備に横たわるエリーゼの姿に、俺の理性は引きちぎられようとしていた。
 火照(ほて)ってどうしようもなく熱くなった体を少しでも鎮めるため、俺はシャツのボタン上から外しだした。

「ちょ・・・ちょっとぉ!何考えてんのよ!!?」

 突然エリーゼは声を張り上げると、俺を必死に押し退けようと抵抗し始めた。
 ・・・さっき承諾してくれたと思ったのだが・・・どうやらきちんと説明する必要がありそうだな。

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