惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「既成事実を作って結婚するしかないと考えている」

 俺の言葉を聞いたエリーゼは更に目を見開いた。

「はあ!!?なんでそうなるのよ!!」

「こういう事は早い方がいい」

「良くないわ!早すぎるわよ!!」

 エリーゼ・・・そんなに早いのが嫌なのか・・・?
 だが、真っ赤になって慌てふためくエリーゼの姿はなんとも可愛い・・・そんな彼女に触れれば、俺はいとも簡単に達してしまいそうだ。

 事実、そんな彼女を想像して俺は・・・。

 ふっ・・・だが、そんな日々の繰り返しで分かった事だってある。

 俺はボタンを外し終えたシャツを脱ぎ始めた。

「そうだな・・・確かに俺は早いかもしれん・・・だが、回数には自信がある。お前を満足してやれる」

「いや何言ってんの!!!?」

 もはや俺の頭の中は冷静さを失い、エリーゼにはとても見せられない程、男の醜い欲望で埋め尽くされている。
 俺は脱いだシャツを投げ捨て、エリーゼの体に覆いかぶさった。
 ただ、彼女を今すぐ俺の物にしてしまいたいという衝動が俺の手を急いた。

「ちょ・・・あ・・・」

 初めて聞いたエリーゼの艶っぽい声に、僅かに繋ぎ止めていた俺の理性がプツッと音を立てて切れた時だった・・・。

「こんのクソエロせっかち早〇野郎があああああ!!!!」

 耳を疑うような単語がエリーゼの口から発せられると同時に、俺の頬に彼女の拳がめり込み、その衝撃で俺はソファーから投げ出された。

 チカチカと目の前が点滅し、ひんやりとした床の冷たさを背に感じながら、ジーンと熱くなる頬を押さえた。

 エリーゼ・・・なかなかやるじゃないか・・・。
 
 彼女の新たな一面を発見して関心していると、エリーゼはソファーから飛び起き、バタバタと隣の部屋へ駆け出して行った。・・・と思ったら、すぐにまたバタバタと足音を立てながらこちらへ戻ってきた。
 そして俺の耳元でその足音が止まり・・・。

バッシャアアアアア!!!!

 突然、俺の頭上から滝に打たれる様な衝撃に襲われ、気付くと全身がびしょ濡れになり、髪の毛からはポタポタと雫が滴り落ちていた。

 今ので完全に頭が冷えた俺は、何が起きたか理解出来ないまま困惑しながら顔を見上げると、空の水桶を持ったエリーゼが息を切らしながらこちらを見下ろしていた。
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