惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「俺は今からいくつか行かなければならない所がある。お前への指示はここに書いてあるから任せたぞ」

 俺は事前に準備しておいた、ダンへの指示書を机の中から取り出し手渡した。
 ダンは、恐る恐るそれに目を移すと、目を白黒させながら食い入るように見始めた。

「・・・・・・え、ルーカス結婚すんの?・・・え・・・?しかも・・・え?え?これ・・・明後日・・・?」

「そうだ、明後日エリーゼと結婚する」

 出来ることなら明日にでもしてしまいたいが、エリーゼが着るウエディングドレスの準備を考えると、明日ではさすがに間に合わない。・・・かと言って、さすがに適当な物で済ませる訳にはいかない。

 ダンには結婚式の会場となる教会と、神父の手配、皇室への言伝(ことづて)等、結婚に必要となる面倒な手続きをしてもらうことになる。
 あと、数日先まで見越した、事業に関する仕事もな・・・。

 俺が書き記した指示書を手に、白目を向き始めたダンは、「ぬあ~~~~!!!」と頭を掻きむしりながら叫び、気を持ち直すように頭を押さえながら口を開いた。

「えっと・・・結婚式に関してなんだけど・・・もちろんエリーゼ嬢の承諾は得てるんだよね・・・?」

「ああ、何も問題ない」

 承諾も得てないし問題は山積みだが、疑り深いコイツの前では少しも迷いを見せる訳にはいかない。

 ダンはやはり疑り深い目でしばらく俺を見つめた後、観念したかのようにため息をついた。

「・・・はぁっ・・・分かったよ・・・。エリーゼ嬢と結婚するのはルーカスの念願だったもんな・・・。こっちの準備は任せろ」

「ああ、頼んだぞ。無事に結婚式が終わったら長期休暇をやろう」

 長期休暇という言葉にダンの瞳がキラキラと輝き出した。

「よし、じゃあ僕は早速教会に行ってくるよ!!開いてるかなんて分からないし、多分閉まってるだろうけどなんとか侵入してくるよ!!」

 活力を取り戻したダンは意気揚々に執務室を飛び出し、意気揚々に階段を飛び降り屋敷の外へと駆け出して行った。

 ・・・あいつ、全然元気じゃないか・・・。休暇前に結婚式の後始末も追加でお願いするとしよう。
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