惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
7:ドレスを買ってあげたい(前編)
 どれくらい眠っていたかは分からないけど、私が目を覚ました時には、すでに首都が目前まで迫ってきていた。
 首都に入る前の関所で、簡単な荷物検査や手続きを済ませ、ドキドキと胸を踊らせながらその地へと降り立った。

「わあ・・・」

 目の前に広がる光景は、まるで異世界に連れてこられたかのようで、思わず感嘆のため息が漏れた。

 気品溢れるドレスと煌びやかな宝石で身を包む貴婦人達、綺麗に塗装され見上げる程に高い建物、人々の活気で溢れ賑わう市場、甘い香りが漂ってくるお洒落なカフェ・・・どれも村では見たことが無い物ばかり・・・あの存在感のある大きな建物は高級ホテルか何かだろうか・・・?

 キョロキョロと興味津々に辺りを見渡しながら歩く私の姿は、きっと田舎娘丸出しだろう。

「そんなに余所見をしていたら迷子になるぞ」

 ルーカスはそう言うと、私の右の手の平に触れ、その指を絡めるようにしてぎゅっと握った。

 こ・・・これは・・・恋人同士がする手の繋ぎ方・・・!!!

 嬉し恥ずかしな気持ちで思わず口元が緩み、その姿をルーカスに見られないように左手でその口元を隠した。
 つい首都の光景に目を奪われていたけど、私は当初の目的を思い出した。

「・・・ねえ、ユーリの住んでいる場所は分かる?」

 私の問いかけに、ルーカスは少しだけ眉を潜めた。

「・・・知っているが・・・行きたいのか?」

「ええ、惚れ薬について、ユーリに聞けば何か分かるかも知れないから・・・」

 惚れ薬を送ってきた張本人だから、その説明くらい詳しく聞いてる・・・はず・・・。

「ああ・・・そうだな・・・後で寄ってみよう」

 何故か少しだけ声のトーンが低くなった様な気がするけど・・・。
 2人の時間が少なくなるのがそんなに嫌なのだろうか?
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