惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
11:彼の過去が知りたい(後編)
 私達が入った部屋は、最低限の装飾品しか置かれていない、応接室にしては殺風景な部屋だった。

 ダンさんはお茶とお菓子を持ってきた侍女と少し会話を交わした後、「何かあれば侍女にお申し付けください」と私に言い残して部屋から出ていった。

 部屋の真ん中には、私の家の物とは比べ物にならないほど上質なソファーが、ローテーブルを挟んで1つずつ置かれている。
 ジルさんに促されるままそのソファーに私が座ると、その座り心地の良さに小さな感動を覚えた。
 向かい側のソファーにジルさんも座り、私に微笑みながら話しかけてきた。

「エリーゼ嬢は、何か私に聞きたい事はあるかな?」

 ジルさんは見るからに高貴な雰囲気が滲み出ていて、きっと身分の高い人なのだと思う・・・。
 それなのに、田舎娘の私なんかに気さくに話しかけてくれることにとても好感が持てた。

 知らない人と話すのは苦手だけど、ジルさんとなら話しやすそう・・・。

「あの・・・ルーカスとジルさんはどういう関係なんですか?」

「ああ、ルーカスとは同期だったんだ。彼がまだ騎士団に所属していた頃にね。年齢は私の方が3つ上になるのかな・・・。なんせ彼は当時15歳で、歴代最年少で皇室直属騎士団の入団試験に合格したんだからね」

 ・・・・・・はい?

「15歳の時に・・・?」

「その反応・・・やっぱり、ルーカスが騎士だったことは知らなかったのかな?」

「はい・・・」

 15歳といえば、ルーカスが村を出てから3年後の事だ。
 その時期、私とルーカスは会うことが無かったから、私が知らないのも無理はないけど・・・。そんなことすら知らなかったのはショックだ・・・。

 皇室直属騎士団と言えば、他国の戦争にも派遣され、命を落とす騎士も少なくないと聞く・・・。
 ルーカスもそんな危険な戦地に向かい、常に死と隣り合わせの戦いに身を投じていたのだろうか・・・。
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